2025年度新設「研究会」のお知らせ
本年3月から新たに下記の研究会が発足いたしました。メンバーとして登録を希望される方は、氏名、勤務先、連絡先(E-mail address 含む)を明記の上、世話人宛にお申込み下さい。研究会の活動期間は1期5ヶ年以内です。継続更新の場合は、延長期間1期3年以内、最長活動期間は2期8年以内です。
(研究会新設募集:7号会告予定/申請締切日/9月1日)
89. コンプレキシティ・トレランス研究会
活動期間:1期5年間(2025年3月~2030年2月)
本研究会では、不純物を多く含むアルミニウム基やマグネシウム基、チタン基リサイクル地金の利用範囲拡大のための材料設計、材料組織制御、材料プロセスに関する指導原理として、新たにコンプレキシティ・トレランス(微視的組織やプロセス条件の階層的不均一性に基づいた損傷許容設計)を提案し、それらを基に実際の工業製品の製造時に安心してリサイクル地金が利用できることを実証することを目的とする。これまで工業用金属材料から取り除くべき存在であった不純物元素や介在物の影響・有害性を理解し、事前に製品や構造物の寿命を予測、設計上の留意点を喚起することで、リサイクル地金を構造材料として創造的再生、すなわち現時点のカスケードリサイクルを水平リサイクルに格上げするための新たな方策(学術変革)を提言することを目指している。
代表世話人:廣澤 渉一
横浜国立大学:教授
E-mail: hirosawaynu.ac.jp
90. 転位と力学特性に関するマルチスケール解析研究会
活動期間:1期5年間(2025年3月~2030年2月)
これまで転位論を基盤として、材料の降伏挙動、加工硬化、破壊挙動など様々な力学特性が明らかとなってきている。転位一本一本の挙動については弾性論を基盤として多くのことが明らかにされているが、従来特異点として無視されてきた転位芯における溶質原子、特に水素や炭素と転位芯の相互作用や、転位の集団運動の結果として表れるマクロな力学特性との相関については、未解決の問題が多く残されている。一方、近年、計算科学や計測技術のめまぐるしい発展に伴って、これらメゾスケールにおける転位運動挙動と、マクロな力学特性との相関が徐々に明らかになってきている。山口珪次が刃状転位とほぼ同じ幾何的構造を有する塑性すべりのモデルを1929年に提案し、1934年にテイラー・オロワン・ポラニーらが結晶中の転位モデルを発表した。本研究会では、転位生誕100周年を見据えて、計算科学・実験科学のそれぞれ携わる研究者間での活発なディスカッションを通してメゾスケールでの力学特性とマクロスケールの力学的性質の発現メカニズムについての明確化を目的とすると供に、本分野の国際的プレゼンス向上を目指す。
代表世話人:田中 將己
九州大学:教授
E-mail: tanaka.masaki.760m.kyushu-u.ac.jp
91. 格子欠陥基礎機能研究会
活動期間:1期5年間(2025年3月~2030年2月)
格子欠陥は結晶性材料の合成・加工・利用の各段階において支配的役割を果たすだけでなく、個々の格子欠陥自身が電気伝導・熱伝導・光伝導など材料の機能的性質において局所的に大きな影響を及ぼす点で近年注目されている。これは最近の計測技術の向上により、従来不可能であった微小領域の計測が可能となり、かつ計算解析技術の向上の結果として現象の理解が深まったことと無関係ではない。今まさに、こうした格子欠陥の基礎的機能を再定義し、学問体系を再構築することが求められている。そこで、本研究会では格子欠陥の基礎的機能について最新の材料開発、高精度計測、高度な計算解析を通して、微小スケールからマクロスケールに至るまで、格子欠陥の機能を理解することを目的とする。
代表世話人:中村 篤智
大阪大学:教授
E-mail: a.nakamura.esosaka-u.ac.jp
92. アモルファス合金・金属ガラスに関する研究会
活動期間:1期5年間(2025年3月~2030年2月)
1970年代に急冷凝固リボン状アモルファス合金が、高強度・高靭性、優れた軟磁気特性や耐蝕性を呈することを世界に先駆けて示す等、我が国は、アモルファス合金研究をその黎明期から牽引し、学問の発展と産業化に大きく貢献した。1990年頃からは、過冷却液体の熱的安定化の学理を探求する、バルク金属ガラスの研究が我が国主導で開花した。近年、構造・組織やダイナミクスの解析法が飛躍的に進化し、稠密無秩序充填構造と考えられた金属ガラスにナノスケール不均質組織が内在することが示された。これがガラス形成・緩和といった物理現象や、マクロな諸性質に及ぼす影響を調べることで、金属ガラスの学理が深化を遂げ、新たな組織・性質制御プロセスの開発にも繋がっている。この研究の流れは、間もなくアモルファス合金もその対象として巻き込み、学問的融合を経て、新たな産業展開をもたらすと考えられる。この研究会は、産学官に跨る我が国の関連研究・開発者を集結し、世界に先だってこれに取り組むことで、アモルファス合金・金属ガラス研究およびその新たな産業化について、世界的イニシアティブを取り戻すことを目的する。
代表世話人:加藤 秀実
東北大学:教授
E-mail: hidemi.kato.b7tohoku.ac.jp